他人の文書や写真を勝手に利用していませんか? 著作権を侵害する可能性も!

ブログ・SNSでの情報発信で、他人の文書や写真を勝手に利用していませんか? インターネットで情報発信する場合、気をつけておかないと著作権侵害となり、「著作権法」で罰せられるので要注意です。

今回は、「著作権法」について分かりやすく紹介すると共に、他人の写真を勝手に公開してはいけない、肖像権(しょうぞうけん)、パブリシティ権についても紹介します。

著作権の範囲と内容について定めた「著作権法」のポイントは、簡単に言うと次のようになります。

「作成した著作物(文章・画像など)が勝手に利用されるのを防ぎ、他人が作成した著作物を利用する場合の注意事項を定めた法律」

インターネットで情報発信をする場合、他人が作成した文章や画像を使う機会も多く、この「著作権」を無視することはできません。

しかし、利用方法が正しければ他人が作成した文章や画像などを利用することは可能です。


著作権法」は著作物利用を制限する内容ばかりでなく、他人の文章を引用する場合など、自由に利用することができる場合も説明しています。詳しくは以下の内容を参照下さい。

 文化庁 |  著作物が自由に使える場合
 http://www.bunka.go.jp/chosakuken/gaiyou/chosakubutsu_jiyu.html


なお、著作権法は、インターネットの普及に従い、頻繁に改訂されていますので、その内容を見る場合、最新版を確認することが必要です。

 著作権法
 http://www.houko.com/00/01/S45/048.HTM



なお、著作権は、「私的利用の範囲ならば他人が作成したものは利用可能」という原則があり、「家庭とか個人の範囲」であれば利用可能ということになります。

但し、会社や公の場で、他人が作成したものを勝手に利用することはできません。

インターネットでの情報発信の場合、たとえ、個人による情報発信でも、その情報は世界中に発信され、公の場に発信されるので、「私的利用の範囲」の範囲を超え、他人が作成したもの(文章・画像など)を勝手に発信すると著作権違反になるので、注意が必要です。


■ 著作権で守られるもの

著作権で守られる著作物の定義は以下になっています。結果的には、「子供が作成していようと、芸術性が無かろうと、個性が表現されていれば、作成されたものは全て著作物」になり、著作権で保護されています。

 「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。」

(1)「思想又は感情」の表現、(2)「創作性」、(3)「表現」したものであることの3要件をすべて充足することが著作物性を満たす要件であると言われています。



■ 著作権とは

作成した画像、文章、音楽データ等(著作物)は作成者(著作権者)のもので、法律「著作権法」で守られている著作物です。

その為、他人が作成したものを、自分のホームページ・ブログ・SNS等に、勝手に利用してはいけません。勝手に利用することは、”複製権(コピーして利用する権利)”などの著作権で規定された権利を侵害し、著作権に違反したことになります。

著作権法に違反した場合、以下のように重い罰則が科せられますので、十分注意しなければなりません。

(1) 著作権・出版権・著作隣接権の侵害
   ・・・10年以下の懲役又は1,000万円以下の罰金

(2) 著作者人格権・実演家人格権の侵害
   ・・・5年以下の懲役又は500万円以下の罰金

なお、著作権には「両罰規定(124条1項1号)」があり、従業員が著作権法に規定する犯罪を行った場合には、行為者本人だけでなく、その使用者である法人も共に罰せられます。法人に対する罰金は、3億円以下の罰金と巨額です。

なお、インターネット上に公開してある画像等で、”フリー(自由に使って下さい)”と表示されている場合は利用が可能です。

但し、画像利用が”フリー”の場合でも、画像サイズを小さくしたり色を変えたり等の編集を禁じている場合がありますので、ホームページにある"利用時の注意事項"を充分確認下さい。



■ 著作権で守られている権利とは

著作権で守られている権利には大きく、2つあります。

通常、著作権というと「著作財産権」のことを言いますが、著作者の人格的利益を保護する「著作者人格権」もあるので注意が必要です。


(1) 著作財産権 -著作物の利用を許諾したり禁止する権利(経済的に「損をしない」こと)

(2) 著作者人格権 -著作者の人格的利益を保護する権利(精神的に「傷つけられない」こと)



著作財産権には多くの権利がありますが、以下の2つが代表的です。

(1) 複製権・・・著作物を複製する権利のことで,著作権の最大の目的です。
(2) 公衆送信権・・著作物を公衆に対して送信する権利です。


著作者人格権には以下の3つがあります

(1) 公表権・・著作物を公表するかしないかを決定できる権利
(2) 氏名表示権・・著作者名を表示するかしないか、表示する場合にどのように表示するかを決定できる権利
(3) 同一性保持権・・著作物の内容や題号を、自分の意に反して無断で改変されない権利



■ 特に注意したい「複製権」と「公衆送信権


著作権法は、著作物に、著作財産権として、いろいろな種類の権利を定めていますが、インターネットで特に重要な権利は、「複製権」と「公衆送信権」です。


まず、「複製権」ですが、「著作物のコピーを作成する権利」で、著作権の要となる権利です。この権利が作成者(著作権者)に与えられているために、他人の著作物のコピーを作ったら、著作権者の権利を侵害することになります。

インターネットのホームページ・ブログなどには、文字、写真などのコンテンツが掲載されていますが、これらは著作権法上の著作物です。

こうしたコンテンツをコピーして、自分のブログやホームページなどに利用する場合は、ある条件(引用の範囲)で利用しないと、著作権者の複製権を侵害し法律違反になります。


次に、重要な権利は、「公衆送信権」です。この公衆送信権とは、著作物を公衆に対して送信する権利です。

公衆送信権には、「送信する行為」だけでなく、インターネットに著作物をアップロードすることなどを意味する「送信可能化」という行為にまで及びます。

簡単に言えば、作成したものを、ホームページ・ブログ・SNS等で公に公開する権利が「公衆送信権」になります。

以上のことから、他人が作成したものを無断でコピーし、インターネット上に公開すると、「複製権」及び「自動公衆送信権」の2つを侵害するということになります。



■ 他人の文章を利用する場合の注意事項(引用)


著作権法には、他人の著作物利用を制限する事項ばかりでなく、”このような場合は利用OKだよ”という内容も記載されています。その中でも、特に大事なのが「引用」という考え方です。


他人が作成した文章は、ある条件を守れば、引用し利用することが可能です。

引用する場合には、文章の質的にも量的にも、利用する側(引用する側)の本文が「主」、引用部分が「従」という関係にあることが必要です。

自分のオリジナルの文章が多くを占め、自分の文章の説明や補強として、他人の文章を利用する(引いてくる)というのが引用です。

以下に引用時の注意事項を示します。

 (1) 公表された著作物であること。

 (2) 他人の著作物を引用する必然性があること。

 (3) かぎ括弧をつけるなど,自分の著作物と引用部分とが区別されていること。

 (4) 自分の著作物と引用する著作物との主従関係が明確であること(自分の著作物が主体)。

 (5) 出所(出典)の明示がなされていること(引用部分の作者名・作品名、ホームページのURL等)。

 (6) 引用する内容を変更しないこと(勝手に変更すると著作者人格権の同一性保持権を侵害)


(注)(6)について、文章の途中を省略する場合は「・・・・(中略)・・・・・」と書くと良いですね。



著作権法 第三十二条から】

(引用)

第三十二条 公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。

2 国若しくは地方公共団体の機関、独立行政法人又は地方独立行政法人が一般に周知させることを目的として作成し、その著作の名義の下に公表する広報資料、調査統計資料、報告書その他これらに類する著作物は、説明の材料として新聞紙、雑誌その他の刊行物に転載することができる。ただし、これを禁止する旨の表示がある場合は、この限りでない。



■ 他人のホームページからの画像の利用

他人が作成した画像データを勝手に利用するのは著作権侵害になるので、注意が必要です。

なお、”画像利用はフリー”と明言している場合は利用してよいですが、この場合、”利用時の注意事項”を充分確認することが必要です。

例えば、”利用時の注意事項”に、「画像はフリーですが、そのまま使うことを条件にフリーにしています。画像の大きさや縦横の比率を変えて利用しないで下さい」という注意書きがある場合があります。

この場合、画像を利用するときは、元の画像のままで利用しないといけません。



■ 肖像権(しょうぞうけん)


「肖像権」というのは誰でも持っている権利で、むやみに自分の写真や名前などを公表されて、嫌な思いをしないための権利です。

各個人は、人格的権利の一貫として、自分の顔写真や肖像画(似顔絵も含む)は、自分の知らないところで勝手に使われないようにする権利を持っているということです。

従って、他人を映した写真、肖像画の類をWebページ等に掲載する場合には、映っている本人の許諾が必要です。

街を歩いている人を撮影した場合も、その人の許可なく勝手に写真を掲載できません。親しい友人であっても、本人の了解をとるのがエチケットです。この肖像権は、どこの法律にも出てきませんが、著作権法上の問題として良く議論されます。



■ パブリシティ権


さらに、タレント等の有名人の場合、顔写真や名前を使って利益を得ることができるので、肖像権以外に氏名・肖像を利用する権利、パブリシティ権というものがあります。

パブリシティ権は、有名人の氏名・肖像は、コマーシャル等に利用することで経済的な利益を上げることができるので、それを保護しようというものです。

そのため、有名人の写真を無断でホームページ・ブログ・SNS等に使用することは、パブリシティ権の侵害となるので、基本的に有名人の写真は載せてはいけません。

有名人の写真を利用する場合には、写真の著作権者のみならず、写真の被写体である有名人の承諾を得なければなりません。



■ 肖像権(しょうぞうけん)とパブリシティー権について(補足)



■肖像権(しょうぞうけん)~自分の肖像を他人に使わせない人格的権利のこと

肖像権について、以下のホームページに分かりやすい解説がありましたので、以下に紹介します。

 肖像権とパブリシティー権 プライバシーとタレントの権利
 http://cozylaw.com/copy/wadai/publicity.htm

人には自分の肖像を他人に使わせないで独占する権利があり、これが肖像権と呼ばれています。

なお、関連する法律は、民法第709条です。

  民法第709条 
   『故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これに
    よって生じた損害を賠償する責任を負う。』

民法第709条は不法行為による損害賠償についての定めです。プライバシーは「法律上保護される利益」にあたり、肖像も同じように保護されるべきであると考えられています。

法律の条文には肖像権という定めは存在しませんが、そのような権利がこの世の中にはあるはずだという考え方が現在では定着しており、肖像権という権利は不法行為の一種であり、プライバシーを守るための権利です。

なお、上記のホームページには、以下の説明がありますが、写真などに誰かが写ってしまった場合、プライバシーを侵害していないかどうか考え、バランス感覚で柔軟に判断したら良いと思います。

『被写体が風景の一部として溶け込んでいたり、画像がボケていて誰なのかがわからない場合など、被写体になった人物に迷惑がかからないようなときには肖像権の問題にならないでしょう。』


■パブリシティー権~顧客吸引力がある肖像や名前の利用を専有する権利のこと

顧客吸引力を持つ有名人の肖像や名前を権利として保護する考え方が定着しており、この権利をパブリシティー権と呼びます。

パブリシティ権は、芸能人の写真を勝手に撮影されたり、その写真を本人の承諾も無く勝手に販売されるようなことを妨げる権利です。

肖像権と比較して言うと、一般人と比べ有名人の名前や肖像には経済的価値があるため、この経済的利益を排他的に支配する財産的側面を認めたものです。

なお、「女性自身」の記事が、歌手のピンク・レディーの写真を無断で使い、「パブリシティー権」を侵害されたとして訴訟された事件の最高裁判決(2012-02-02)が以下に説明されていましたので、紹介します。

 パブリシティー権、最高裁で認められる [法務コラム]|企業法務ナビ
 http://www.corporate-legal.jp/houmu_news607/
 
今回の判決は、パブリシティー権が法的権利であると最高裁判所が初めて認めた重要なものです。

問題となったのは、週刊誌「女性自身」がダイエット法を紹介した2007年2月27日号の記事で、同社側が過去に撮影したピンク・レディーのステージ写真など14枚を掲載したもの。提訴したピンク・レディー側はパブリシティー権侵害を主張していた。

最高裁判所小法廷は判決理由で、パブリシティー権を「(著名人などの)商業的価値に基づく人格権のひとつで、顧客吸引力を排他的に利用する権利」と初めて定義。法的権利であることを明言。

そして、パブリシティー権侵害になる具体的ケースとして(1)肖像それ自体を鑑賞対象とする商品に使う(2)商品の差別化に使う(3)商品の広告として使う――など「専ら顧客吸引力の利用を目的とする場合」と説明。グラビアやキャラクター商品などは侵害に当たるとの判断。

一方、著名人は社会の耳目を集めやすく、報道や創作物など正当な表現行為で氏名や肖像を使われるのは一定程度、受忍すべきだとも指摘。その上で、今回の記事は、ピンク・レディーそのものを紹介する内容ではなく、ダイエット法などを紹介する程度にとどまっているとして「顧客吸引力の利用が目的ではない」と結論付け、原告側(ピンク・レディー)の敗訴が確定。